肩こりや首の痛み、腰痛に鍼灸治療を行うとき、痛い場所に鍼をするほか、離れた手足のツボに鍼をすることがあります。
「肩が痛いのに、なぜ手に鍼をするの?」
「腰が痛いのに、どうして足のツボを使うの?」
「右が痛いのに、なぜ左に鍼をするの?」
このように不思議に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その理由を理解するうえで大切なのが、東洋医学の「経絡(けいらく)」という考え方です。
今回は、洲本市の吉澤鍼灸治療院が、肩こり・首の痛み・腰痛と経絡、さらに臓腑や気血水との関係についてわかりやすく解説します。
経絡とは? 手足から肩・首・腰へつながる道筋
東洋医学では、身体には「経絡」と呼ばれる道筋が全身に張り巡らされていると考えられています。
経絡は手足から腕や脚、肩、首、背中、腰などへとつながり、さらに身体の内側にある臓腑とも関係しているとされています。
例えば、肩こりや首の痛みに関係する経絡には、次のようなものがあります。
- 肩こり・首の痛みと小腸経
小腸経は手の小指から腕の小指側を通り、肩甲骨、首へとつながる経絡です。
この経絡のつながりを考え、肩や首の症状に対して、手にある「後谿(こうけい)」などのツボを使うことがあります。
- 腰痛と膀胱経
膀胱経は頭部から背中、腰、お尻、太ももの裏、ふくらはぎを通り、足先へと続く経絡です。
腰痛に対して、膝の裏にある「委中(いちゅう)」や足首付近の「崑崙(こんろん)」などのツボを用いることがあります。
つまり、東洋医学では、肩や腰と手足は経絡という道筋を通じてつながっていると考えるのです。
そのため、痛みのある場所だけでなく、離れた手足のツボも施術に用います。

右が痛いのに、なぜ左側に鍼をするの?
鍼灸治療では、痛みのある場所と反対側のツボを使うこともあります。
例えば、右肩が痛い場合に左腕のツボを使ったり、右側の腰に痛みがある場合に左脚のツボを使ったりすることがあります。
東洋医学には、「巨刺(こし)」や「繆刺(びゅうし)」という、痛みのある側とは反対側に鍼をする伝統的な施術方法があります。
古くから、身体の左右のつながりにも着目して施術が行われてきました。
ただし、必ず反対側に鍼をするわけではありません。
痛みの場所や身体の状態、経絡の反応などを確認し、どちら側のツボを使うか判断します。
このように、痛む場所から離れたツボや反対側のツボを使うことも、経絡を用いた鍼灸治療の特徴の一つです。
経絡は臓腑ともつながっている
経絡の特徴は、身体の表面にあるツボだけでなく、内側にある臓腑とも関係していることです。
東洋医学では、肝・心・脾・肺・腎などの臓腑が互いに協調し、身体のさまざまな働きを支えていると考えます。
ここでいう臓腑は、現代医学の臓器そのものだけを指すのではなく、身体の機能も含めた東洋医学独自の概念です。
例えば、脾胃は飲食物から身体を養うものを作り出す働きに関係し、肺や腎なども気や水分の巡り、身体の働きを支えるとされています。
そして、これらの臓腑が協調することによって、「気・血・水(き・けつ・すい)」が生み出され、巡り、調節されると考えられています。
気血水とは? 身体を養い、潤す大切な働き
東洋医学では、健康な身体を保つために、気・血・水が十分にあり、全身を滞りなく巡ることが大切だと考えます。
- 気(き):身体を温め、動かし、さまざまな機能を支えるもの
- 血(けつ):筋肉や皮膚など、身体の組織を養い、栄養を与えるもの
- 水(すい):身体に潤いを与え、水分のバランスを保つもの
東洋医学では、気血の巡りが滞ると痛みが生じやすくなり、血や水による滋養が不足すると、身体の組織が十分に養われなくなると考えます。
例えば、筋肉がこわばったり、身体が重だるく感じられたりする状態も、気血水の状態と関連づけて捉えることがあります。
身体の隅々まで気血水が巡り、組織が十分に養われ、潤いが保たれること。
これが、東洋医学で健康を考えるうえで大切な視点です。
【図2:臓腑・気血水と全身のつながり】

筋肉・筋膜・リンパ・神経との関係
肩こりや首の痛み、腰痛には、筋肉だけでなく、筋膜や神経など、さまざまな組織が関係しています。
筋肉や筋膜は身体の動きを支え、神経は感覚や筋肉の働きを調整しています。
また、血液は酸素や栄養を運び、リンパ系は組織の水分バランスの維持などに関わっています。
こうした組織は、それぞれが独立しているわけではなく、互いに関わりながら働いています。
東洋医学では、このような身体全体の働きを、経絡や気血水の巡りという視点から捉えています。
例えば、筋肉のこわばりや痛みについても、局所の筋肉だけでなく、身体を養う血や潤いを与える水、気の巡りなどを合わせて考えます。
ただし、東洋医学の気血水は、現代医学の血液・リンパ液・神経と同じものではありません。
また、経絡は解剖学的に確認された血管や神経のような構造ではなく、東洋医学における身体のつながりを表す概念です。
鍼灸による痛みの緩和については、神経系への刺激など、現代医学の視点からも研究が進められています。
肩こりや腰痛は、痛い場所だけが原因とは限りません
肩こりや首の痛み、腰痛は、必ずしも痛い場所だけに原因があるとは限りません。
長時間のデスクワークや姿勢、筋肉の緊張、疲労、神経への負担など、さまざまな要因が関係しています。
例えば、肩の痛みに首や背中の状態が関係していたり、腰痛にお尻や脚の筋肉、関節の動きが影響していたりすることがあります。
東洋医学では、このような身体のつながりを経絡という視点から考えます。
そして、痛い場所だけでなく、手足のツボや全身の状態、臓腑と気血水の関係にも目を向けます。
身体全体のつながりを大切にする鍼灸治療
経絡は、手足から肩や首、腰へとつながり、さらに身体の内側にある臓腑とも関係していると東洋医学では考えられています。
臓腑の働きによって気血水が生み出され、全身を巡り、身体を養い、潤すとされています。
そのため、鍼灸治療では、痛みのある場所だけでなく、離れた手足のツボを使うことがあります。
痛い部分だけを見るのではなく、身体全体のつながりや巡りを大切にすること。
これが、経絡を用いた鍼灸治療の大切な考え方です。
洲本市の吉澤鍼灸治療院では、肩こり・首の痛み・腰痛などについても、痛みのある場所だけでなく、一人ひとりの身体の状態を確認しながら施術を行っています。
洲本市をはじめ、淡路市・南あわじ市など、淡路島で鍼灸治療をお考えの方にも、東洋医学の考え方を知っていただければ幸いです。
※強いしびれや筋力低下、排尿・排便の異常を伴う腰痛などは、医療機関での診察が必要です。
吉澤鍼灸治療院(兵庫県洲本市)

