鍼は時間じゃない。「気至」こそが治療の核心 – 霊枢『九鍼十二原篇』に学ぶ

淡路島(洲本市・南あわじ市・淡路市)にある吉澤鍼灸治療院です。

鍼灸治療において、「治療時間が長いほうがいいのか?」という質問を受けることがあります。

10分?15分?30分?60分?

しかし、古典『霊枢』の中には、そんな“時間”という尺度を超える大切な言葉があります。

『霊枢』とは──2000年以上前から伝わる鍼の教科書

『霊枢(れいすう)』は、中国最古の医学書『黄帝内経』の一部を成す重要文献です。

その原型は紀元前2世紀ごろの前漢時代に遡り、今から約2000年以上前にまとめられたとされています。

特に『霊枢』は、鍼や経絡についての専門的記述が多く、「鍼灸のバイブル」とも言われる存在です。

「気至らざれば、病癒えず」

『霊枢 九鍼十二原篇』には、こう書かれています。

「鍼を刺して気至らざれば、病癒えず。気至って止まざれば、病また癒えず。」

意味はこうです。

「鍼を刺しても“気”が至らなければ、病は癒えない。気が至っても、それに応じた処置をせずに放置すれば、病はやはり癒えない。」

つまり、**鍼治療で本当に大切なのは、“時間”ではなく、“気が至ったかどうか”**なのです。

私自身、弟子入りから始まり、20年以上にわたり鍼灸のみで臨床を続けてきました。

整体やマッサージといった手技には頼らず、鍼灸のみで治療を重ねてきた中で、「気至」という瞬間こそが、最も深く身体に作用することを確信しています。

ブレることなく鍼一本にこだわってきたからこそ、その感覚の重要性がより明確になりました。

鍼は、刺した長さや時間ではなく、「今、この瞬間に身体がどう応えたか」を見極める術。

それを古典から学び、現代に伝え続けたいと思っています。

時間よりも「気至」すれば効く

臨床では、「鍼を刺してすぐに気が動いた」と感じる瞬間があります。

  • 一刺しで深い呼吸が出る
  • 鍼がふっと吸い込まれるように入り、まるで「ここがちょうどいい」と身体が応えてくれているような感覚
  • 患者さんが「あ、何か流れた」と言う
  • 術者が患者さんの気の流れを感じる感覚

こうした時、わずか数秒で鍼を抜いたとしても、十分な効果が出ることがあります。

逆に、いくら時間をかけても“気”が動かなければ、効果は乏しいこともあります。

例えば、お風呂は気持ちいいけれど、長く浸かったからといって体調が良くなるわけではありませんよね。

体力に見合わない時間浸かれば「湯あたり」もありますよね。

大事なのは、時間よりも「反応」。

鍼灸も同じです。

時間よりも「感応」が治療を生む

「長く置けば効く」という考え方は、近代的な「物量的思考」かもしれません。

『霊枢』が伝えているのは、

  • 気が至ること
  • そして、至ったタイミングで対応すること

この2点がそろってこそ、治療として成立するという考え方です。

当院の治療方針

  • 『霊枢』は、2000年以上前から「気の至り」の重要性を説いてきたので実践しています。
  • 鍼は「時間」ではなく、「反応」で勝負しています。
  • 古典に基づき、「気至」を治療の核心と捉え、一刺ごとに身体の反応を見極めながら、真の変化を引き出す鍼灸を実践しています。
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